メトホルミンでエイジングケアが期待できる?

2型糖尿病の治療薬として昔から使われているメトホルミンは、各種研究により糖尿病以外にもさまざまな働きに関係していることがわかってきました。

代表的なものとしては、2型糖尿病をきっかけにして起こりやすい病気(糖尿病の合併症)を防ぐ働きや、エイジングケアが期待できるような働きです。

ここでは近年話題となっているメトホルミンがもつさまざまな働きについて紹介します。
メトホルミンの服用を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

メトホルミンとは

メトホルミンはビグアナイド系という種類の2型糖尿病に使われる治療薬です。
糖尿病治療薬としては使用実績の長い薬で、食事療法や運動療法をしても高血糖状態が改善されないときに使われています。

当院ではメトホルミンを肥満治療の目的で処方しています。
肥満治療の詳細については、「メトホルミンダイエットの治療ページ」をご覧ください。

(※メトホルミンは2型糖尿病には保険適用ですが、肥満治療の場合には公的医療保険が適用されない自由診療です。)

メトホルミンがもつさまざまな働き

メトホルミンは、筋肉で糖分を消費しやすくする働きや、肝臓で糖分を作られにくくする働きにより、2型糖尿病患者の血糖値を改善する薬です。
またメトホルミンはこれまでの研究により、血糖値を改善する以外にもさまざまな働きをもつことがわかってきました。

たとえば2型糖尿病の患者で起こりやすくなる病気(脳卒中や心筋梗塞、足の切断など)を防ぐような働きです。
さらに近年では、メトホルミンのエイジングケア作用に注目が集まってきており、世界的な研究が活発になってきています。

エイジングケアが期待されるメトホルミン

さまざまな働きをもつメトホルミンは、世界各国の研究によりエイジングケアに関係している可能性が報告されています。
ここでは代表的な特徴について紹介します。

<メトホルミンの働き|活性酸素を抑制する>

活性酸素とは

活性酸素は酸素を原料として作られており、免疫機能や生理活性物質として利用されています。

紫外線や喫煙、薬剤、ストレスなどの影響で活性酸素が過剰に作られる(いわゆる酸化ストレス状態)ようになると、細胞が傷つきやすくなります。

そうなると生活習慣病(2型糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、がんなど)にかかりやすくなると言われているのです。

また肌にとって必要な成分であるコラーゲンやエラスチンを減少させるためにシワやたるみ、シミなども起こりやすくなると考えられています。

活性酸素を抑制するメトホルミン

メトホルミンは、酸化ストレスによって活性化されるNrf2という転写因子を活性化させる働きが確認されています。
この転写因子には活性酸素を除去する働きが知られており、活性酸素が原因で起こっているさまざまな病気の改善が期待されています。

<メトホルミンの働き|炎症反応を抑制する>

老化細胞と慢性的な炎症反応

1961年にアメリカのヘイフリック博士により、ヒトの細胞を試験管で培養するという研究がおこなわれました。
この研究により、ヒトの細胞(体細胞)が一定の回数後に細胞分裂による増殖を停止して、二度と増殖しなくなることが発見されたのです。

また後年の研究により、染色体の末端にはテロメアという構造があり、細胞が分裂する度に少しずつ短くなっていくことも明らかになりました。
その結果、テロメアが限界まで短くなり、細胞分裂が停止した状態を「ヘイフリック限界」と呼ぶようになりました。

「ヘイフリック限界」によって古くなった細胞が分裂しなくなったときには、主に自然免疫の働きによって体内から除去されます。
しかし加齢によってこの機能が弱まってしまうと、除去されずに残ってしまう細胞(老化細胞)が、体のさまざまな組織に蓄積してしまうのです。

近年の研究により老化細胞からは、炎症を引き起こすような物質が分泌されているとわかりました。
老化細胞が過剰に組織へ蓄積して慢性的な炎症反応が起こることにより、組織の機能が低下して、将来的に動脈硬化やがんなどのさまざまな病気を発症するリスクが高くなるのではないかと考えられています。

炎症反応を抑制して筋肉を衰えにくくするメトホルミン

60歳以上でBMIが30未満の健康な男女20人を対象にした米国の研究では、メトホルミンの服用により、老化細胞による慢性炎症が抑制される可能性について示されています。
メトホルミンの服用により、筋肉の線維化や組織の硬化といった筋肉の衰えを防ぐ働きが期待できるのです。

活性酸素や炎症反応は体にとって大切な働きですが、過剰に働いてしまうことでさまざまな病気の原因にもなってしまいます。

メトホルミンを使用することで、活性酸素や炎症反応の過剰な働きを防ぎ、エイジングケアに活用できるのではないかと世界的に注目を集めており、近年ではさまざまな研究が活発におこなわれています。

(※メトホルミンを糖尿病患者以外にエイジングケア目的で使用できるかどうかについては、大規模な臨床試験中のためまだはっきりとはわかっていません。具体的な効能効果等についても不明です。)

副作用・注意事項等

禁忌

  • 妊娠中、授乳中の方
  • 他に糖尿病の薬を服用している方
  • 経口摂取が困難な方、寝たきりの方など全身状態が悪い方
  • 乳酸アシドーシスの既往歴がある方
  • 16歳未満や75歳以上の方
  • 大量の飲酒をする方
  • 手術前後の方
  • 脱水症状がある方
  • 肝臓・腎臓・心臓・肺機能障害のある方
  • インスリンの絶対的適応がある方
  • 栄養不良の方
  • 下垂体・副腎機能不全の方
  • 推算系球体ろ過量(eGFR)が30mL/分1.73m2未満の場合

副作用

胃腸障害、貧血、味覚異常、低血糖、乳酸アシドーシスなど

注意事項

  • メトホルミンを肥満治療目的で使うときには、1回250~500mgを1日2回朝夕の食直前または食後に服用します。用法用量を守って正しく服用してください。
  • メトホルミンの服用中は水分補給をこまめにするように心がけましょう。
  • メトホルミン服用中は定期的に各種検査を受けるようにしてください。
  • 発熱や下痢などにより脱水の恐れがある場合は、メトホルミンを服用しないでください。
  • 下痢、吐き気、過呼吸、筋肉痛、強いだるさなどの症状が出たときは、メトホルミンの服用をやめて医師にご相談ください。
  • 利尿作用のある薬剤(各種利尿薬、SGLT2阻害薬など)とメトホルミンを併用するときには、脱水症状に注意しましょう。
  • 腎血流量を低下させる薬剤(NSIDs、各種利尿薬、レニン・アンジオテンシン系の阻害薬など)と併用すると、急激に腎機能が悪化するかもしれません。
  • ヨード造影剤を使用する検査の前または検査時には、メトホルミンの服用を中止してください。ヨード造影剤の投与後48時間はメトホルミンの服用の再開をしないでください。
  • 腎機能が悪化する恐れのあるときにはeGFRの測定が必要です。肝機能が悪化する恐れのあるときには、服用を再開する前に肝機能の検査後に医師に確認してください。

料金

メトホルミンは2型糖尿病治療には保険適用ですが、肥満治療の場合は公的医療保険が適用されない自由診療(自費)です。

お薬代

メトホルミンの料金

250mg 60錠 (1日2錠内服した場合30日分)¥1,800(税込¥1,980)
500mg 60錠 (1日2錠内服した場合30日分) ¥2,800(税込¥3,080)

メコバラミンの料金

500μg 60錠 (1日2錠内服した場合30日)¥1,500(税込¥1,650)

※メトホルミンを服用中、ビタミンB12の欠乏による貧血症状や味覚異常といった副作用が出るかもしれません。当院ではこのような副作用を予防するために、メトホルミンとともにビタミンB12製剤であるメコバラミン錠を処方しています。

来院による診療

診察料¥1,000(税込¥1,100)

オンライン診療

郵送料¥1,000(税込¥1,100)
診察料¥1,000(税込¥1,100)

メトホルミンの肥満治療に興味がある方は、渋谷駅前おおしま皮膚科へ

今回はメトホルミンのさまざまな働きについて紹介しました。
これまで2型糖尿病の治療薬として長い歴史をもつ薬ですが、とくに近年はメトホルミンを使ったエイジングケアについて、世界各国で実用化を目指した研究が進められています。

当院ではこのような話題性のあるメトホルミンを肥満治療の目的で処方しています。肥満治療について興味がある方は、いつでもお気軽にご相談ください。

【渋谷駅前おおしま皮膚科院長|大島 昇 監修】

メトホルミンについて

・未承認医薬品等(異なる目的での使用)

メトホルミンは医薬品医療機器等法において2型糖尿病の効能・効果で承認されていますが、肥満治療目的の使用については国内で承認されていません。

・入手経路等

国内の医薬品卸業者より国内承認薬を仕入れています。

・国内の承認医薬品等の有無

国内で肥満治療の効能・効果で承認されているビグアナイド系薬剤はありません。
またメトホルミンを一般名とする医薬品は国内では2型糖尿病の効能・効果で承認されておりますが、承認されている効能・効果及び用法・用量と当院での使用目的・方法は異なります。

・諸外国における安全性などに係る情報

GLP-1受容体作動薬の注射製剤が米国FDAで肥満治療薬として承認されています。